映画生活

基本的にネタバレ有りなのでご注意ください

【映画感想】シャイニング (1980)

1980年公開。スタンリー・キューブリック監督。

主にドラマとの比較の感想になります。

 

数日前に原作者のスティーブン・キング製作総指揮のドラマ版を見ましたが、なんとなく作り直した理由がわかった気がします。

 

ドラマ版に比べると終盤にやっつけ感を感じました。最後の凍ったニコルソンやその少し前のクマと老紳士が部屋で何かやってるシーンとかふざけすぎ。原作の本は見たことありませんが、仮に原作者製作総指揮のドラマ版を原作に忠実な映像作品としたら映画版のシャイニングは結構な改変がなされているということが想像に難くないです。

しかしインパクトはこっち(映画版)のほうがありますね。

演出も最初の方映画版のほうがいいなと思いました。迷路やダニーがカートで広い部屋の中を駆け回るカメラワークとか。屋敷の内部をわかりやすく演出している点もいいです。

ホラーとしてはバスルームの女性はCGを使ったドラマ版のほうがキモくて怖かった。屋敷のパーティーのシーンは全体の中で尺は短めだったのでドラマ版と比較すると少しだけ物足りなくも感じました。

CGと言えば1980年当時にはCGがなかったのでトニーを子供の一人芝居で表現していたのは比較として面白かったです。

 

またシャイニング(輝き)の能力に関してもドラマ版以上に出番がありませんでした。

あの黒人はドラマ版では生きていたんですけど、映画版ではすぐに殺されてしまいそれっきりでした。同じ能力を持つ同士だということは説明されますが、屋敷の中で十数えていないいない、これは本の中のもなんだ(意訳)というのもおまじないを教えるシーンもなかったです。

 

ドラマ版のラストはボイラーが爆発して亡霊ともども変わってしまった主人公を吹き飛ばすというものでしたが、映画版は黒人の乗ってきた車で脱出、ニコルソンは迷路に迷って凍死してしまうラスト、じつにあっさりとしたものでしたのでどこか物足りなさも残ります。

 

ドラマ版では酒に近づかないように近づかないようにという葛藤が描かれています。これはかつて子供に怪我(重症)を追わせていたことが原因で断酒会に参加するほど酒と縁を切ろうとしている主人公の姿が描かれます。対して映画版は早々に気が狂ってしまったので子供に怪我をさせたことについてもある種の開き直りのような言動が先立っていてました。

 

終盤に妻を襲撃後子供を襲撃するために屋敷獣を探し回ることになりますが、怯える子供の姿を見て理性を取り戻していたドラマ版の踏みとどまる描写もなくひたすら子供を追いかけまわします。

原作者としては納得いかない気持ちにになってしまうのも無理はないかと思いました。

 

ただ主演のジャック・ニコルソンの演技はかなり独特ですごい印象に残ります。ドラマ版の主人公の人も悪くはないのですが、眉や目の動きが特徴的なニコルソンさんのほうが顔中血だらけでもないのに記憶に残りますね。

 

親子の絆や最後に感動路線に持っていったり、設定や各シーンの描写を丁寧に描いているのがドラマ版。ジャック・ニコルソン劇場を楽しめるのが映画版というように感じました。

個人的にはどっちと決めるのは難しいですね。ニコルソンの演技は唯一無二のものだし演出面や屋敷の魅力を伝えているのは映画版ですし、作りが丁寧でヒューマンドラマも交えたドラマ版も捨てがたい。

要するにどっちも見て損はないということですね。