1998年の映画。
生まれたときから人生を生中継されている男の話です。
巨大すぎるスタジオを一つの島と見立てて周りの人物も全員エキストラです。
番組は高視聴率で制作スタッフ側からするとこのトゥルーマン・ショーは金のなる木です。
番組内でCMは流れず、登場人物がスポンサーの商品を身に着けたり、それとなく宣伝したりして広告料を稼いでいます。
少年の時は何の疑いもなく暮らしていました。
与えられた人生を受け入れていたわけです。それは容易とプロデューサーが言うセリフが印象に残っています。このプロデューサーはトゥルーマンを「囚人」と言い切っています。
しかしやがて何かがおかしいことに気づきます。
制作側からしたらトゥルーマンに知られることはまずいです。甘い蜜がこれから吸えなくなるわけですから。
真実をほのめかす人の存在も出てきて、ある日トゥルーマンは監視の目を盗み、船旅にでかけます。
そして嵐や雷を落とします。スタジオなのでこんな芸当ができるのです。
トゥルーマンが頑張る様子を見て視聴者はがんばれーと応援したりします。
最後は壁を発見し、近くにあった階段登って外に出てトゥルーマン・ショーは完結します。
22年ぶりに見ました。当時私は中学生でしたが退屈に感じたのを覚えています。起承転結の承の部分が長く感じられ中だるみに感じられたからだと思います。というか最後のシーン以外全部忘れていましたけど。
トゥルーマン・ショーは楽しい感じだというイメージで記憶の片隅にとどめていましたけど、今見るとトゥルーマンを食い物にして暴利を貪ってる連中の胸糞話です。
自分の人生だと思っていたものは全部偽物でプライバシーなんてあったもんじゃなかった。
でも一方で知らなかったらそれはそれで幸せだったんじゃないかとも思えます。与えられた人生でも。こないだ見たアップグレードのラストは主人公はステムに与えられた世界で幸せになりました。
しかし自分がトゥルーマンだったら真実を知ったらふざけるなと叫ぶでしょうね。でもトゥルーマンは最後に笑っていました。それは嘘だったけど自分を育んでくれた世界に対する感謝なのか、それとも皮肉なのか。両方なんでしょうかね。
それにしても最後の「終わっちゃった、チャンネル変えよう、番組表は」という何気ない会話がゾッとしますね。
彼らにとってはエンターテイメントの一つにすぎず、トゥルーマンはその内のひとつに過ぎなかった。応援して熱くなっていたのも一時的なものだった。
みんな応援してたけど番組が終わったら興味を示さなくなる。彼らにとってはたかがテレビで各々のリアルの世界の中に大切な人がいます。
それはエキストラとして出演していた人たちもそうです。仕事としてお給料をもらってトゥルーマンと接していたわけです。彼らもまたリアルで大切な人がいて、虚構の人物であるトゥルーマンはそうではなかった。よってたかって金と引き換えに一人の男を騙しているわけですから中には良心がとがめて真実を言う人も出てきます。
エンディング後はその人と幸せな家庭を築いてほしいなと思いました。
先程のゾッとしたラストカットのことですがゾッとすると同時に自分も視聴者の立場だったら「あー面白かった、さて次何見ようかな」となるだろうというのもまた事実です。
自分のかけがえのない人たちを大切に思おうと再確認する映画でもありました。
音楽もよく特に劇中とエンドロールで流れるピアノ曲が素敵でした。
子供の時はこの映画の裏にあるテーマが見えてませんでしたので、最後は外に出られたよかったくらいにしか思っていませんでした。ですがおとなになってから見ると裏に反面教師的なテーマがちゃんとあり胸糞な面はありますが割といい映画でした。