2015年。
実話を元にした映画でカトリック教会神父による児童への性的虐待事件をスクープするボストン・グローブ紙のチーム「スポットライト」の奮闘を描きます。
デッドマン・ウォーキングのような考えさせられる系ですね。
終始淡々としていますが扱っている題材がデリケートでタブーにも触れる内容なので吸引力があります。
性的虐待をしている神父というのも一人二人じゃなくて組織ぐるみで長年に渡り行われてきた事件なので敵はカトリック教会となります。
しかし教会はものすごい権力を持っていて圧力で取材する記者たちを次々と妨害していきます。
劇中に出てくる成人したかつて神父の性の慰み者にされていた男性たちの証言がショッキングでこれが実際に起きたことだと思うと本当に胸糞悪くなります。
それも被害者は一人二人じゃなく1000人、歴史を遡ると実に10000人以上の被害者がいるとのことです。
被害者は心から真相が白日の下に晒されることを願っていてもう二度と思い出したくもないような過去を勇気を持って打ち明けます。
地元の人達この事件のこと薄々気づいていたんです。スポットライトチームの面々もそうです。誰も行動しなかったんです。誰も一石を投じられなかったんです。
でも責められないと思います。いらんことほじくり返して廃刊とかになっても困りますし。立場もあります。守るべきものもあります。
神父の被害者はあくまで取材対象で所詮は他人事です。自分が被害を受けたわけじゃないので。
こういう言いたいことも言えない的な状況や構造、環境はごまんとあると思います。
明らかに異常な状態でもその閉鎖的な空間では正常でみんなそれが異常だと気づきながらも見て見ぬ振りしたり、洗脳されてしまったりする。
一部の教会内部でも児童を相手に変態神父により同じような構造、環境が作り出されていて未熟で判断力のないか弱い子供がその犠牲となってしまいました。
この事件を暴こうとするチーム、スクープでお金儲けしたいというのがまずあると思います。でも被害者や加害者に対する取材を経て被害者を救うという熱意、執念が出てきて行動をやめることをしません。街中を敵に回し(街の人はみんなカトリック教徒)最悪廃刊になる可能性があるにも関わらず。
自分の愛する子供たちがいる人はもし自分の子供が変態親父の慰み者にされそれを苦に命を断ってしまったり生涯癒えることのない心の傷を抱えて生きていくとしたら絶対に許せないと思うでしょう。もちろん本人も。
この事件に入れ込むあまり熱い気持ちが先走るあまり上司と衝突を起こし激昂して部屋から出ていくメンバーもいます。上記のようなことを自分の身に置き換えて焦ってしまったのです。
でもチームのみんなもみんな同じ気持ちです。真実を伝え新たな被害者を無くしたいのです。でも半端な記事じゃ平謝り程度の謝罪で済まされたり、相手弁護士に簡単に捻り潰されてしまうため、周到な根回しに裏とり、証拠準備が必要なので冷静に頭を使うことも要求されベテラン勢がその役を担います。
全編に渡り「静」な演出で派手さはありません。淡々としてます。それはエンディングもそうです(私はこの映画のスタッフロール入りは好きですが)。というかエンディングですべて解決していません。むしろはじまりです。これから第二ラウンドの開始という終わり方。
考えさせられる系ではありますが、人生観が変わったり勇気出さなきゃとかまでは思いません。やはり自分の身に降り掛かった災難というわけではありませんのでそこは他人事です。やっぱり。
でもこのようなおぞましい事件があったということをこの映画で知ることができました。
この知らせるということはスポットライトチームがやったことです。