2019年。
原発事故の時に福島の第一原発にいた人たちや彼らの関連人物、政府の人間等を描いています。
私は関東圏に住んでいますが福島の人間ではありません。事故当時切迫感はありましたが福島の人々ほどではありません。それにしてももう10年になるんですね、東日本大震災から。この映画を見ていて当時を思い出しました。宮城県や岩手県の津波の印象が強いですが原発関連では地震の翌日に福島第一原発の屋根が爆発したニュースは未だに頭に浮かぶくらいぞっとしました。他にも自衛隊ヘリで上から放水とかありましたね。CMが全部ACになり自粛ムード、計画停電の実施、ミネラルウォータ価格の高騰、ニュースでは圧力容器や燃料棒、シーベルトというような原発用語が飛び交い、余震の影響で度々揺れた事故後の1ヶ月は生涯忘れることはないでしょう。
この映画では事故発生時に事態をなんとかしようと懸命に動いた現場の人間を主に描いています。
ただ役者が演技してる感や脚色もありあれ?というのは当初ありました。
ただ前半のベント作戦あたりから緊迫感が増してきました。いやほんと戦時中の決死隊くらいの覚悟だったと思います。
アリとキリギリス石井ともうひとりが線量がめちゃくちゃ高いゾーンに足を踏み入れる時に靴底がちょっと溶ける演出もゾワっとします。そして作戦失敗のときの石井ちゃんの演技がなかなか良かったです。
政府からの命令で海水注入をやめろと言われた時に一芝居売って従ったふりして注入続行したりします。よく考えると命令にしたがって注入やめたらまじで洒落にならないことになっていたかと思うと無能が国を動かしていることの恐ろしさを感じました。
本部からさっさとやれ責任とるからと急かされて渡辺謙がブチ切れるシーン(そんなシーンばっかですが)はだったらてめぇが来いよと誰もが思ったことでしょう。
しかし逆らう事ができません。撤退も許されない。
周囲では爆発が度々起こりもしかしたら死ぬんじゃないかという状況の中、後にフクシマ50と呼ばれることになる人たちを残して全員退避。その人達は高い線量の中危険な作業に従事ことになります。
彼らと彼らを想う家族たちは胸が潰れるような心境の中メールのやりとりをしているシーンが印象に残りました。
最後は無事に最悪の危機を脱し、避難所で家族と再会する佐藤浩市・・・そこからエピローグへという流れです。
人間ドラマに重きを置いた実話ベースの福島原発事故、なかなか見ごたえがありました。
自分の身に置き換えるとフクシマ50の人たちがしたことは到底できそうになくなりふり構わず自分の命を優先して逃げ出してしまうかもしれません。
現場で奮闘していた人たちが命を削って頑張っているのに対してひたすらいらん命令を出す無能上司という図は人類滅亡系映画の会議室でよく見る光景ですが、あれは結構リアリティあったのかもということも思いました。
戒めや忘れてはいけない・・・という感じの映画ですが人間ドラマに焦点が当てられていたので結構見やすくエンターテイメントとしてもなかなか楽しめました。