映画生活

基本的にネタバレ有りなのでご注意ください

【映画感想】小さな恋のうた(2019)

2019年。

邦画。

 

舞台は沖縄。4人組の学生バンドが学祭で披露するために頑張ってる矢先にメンバーの一人が事故死。

その事件が発端で地元民と米軍間の緊張が高まり在日米軍の家族に外出禁止令が出たりします。

 

事故死した男の子シンジには妹がいて妹マイが兄の遺志を受け継いで自分がバンドに参加すると言い出します。

しかしバンドは空中分解してそのうちの一人は他のバンドのところに入っちゃいます。

 

シンジには彼女(になる予定の人)がいました。アメリカ人の女の子リサで父は米軍の人です。

米軍の人が住むエリアと地元民が住むエリアは国境のようにフェンスで区切られていてリサとマイを始めとするバンドメンバーたちはフェンス越しの友情でつながっていました。

 

ボーカルのリョータ、ドラムのコータロー、ギターのマイはシンジのためにも絶対に学祭で演奏することを決意します。それが今は亡き彼の無二の願いだからです。

 

しかし学祭でバンドするためには思いの外高いハードルが待ち受けていていました。

彼らは果たして無事学祭でバンド演奏することができるのか・・・?

 

という流れです。

 

 

感想はありがちなお気楽学園コメディーという感じとは明らかに違い、前半から仲間の死を描いていて重いです。

更に米軍と地元民との政治的な軋轢等のシビアな外枠も設定されています。

生活エリアがフェンスで区切られていることも初めて知りました。

 

演出も結構凝っていて、交通事故が起きてその事故でシンジが命を落としたことがわかるまでの一連の夢なのかうつつなのかよくわからない霊的な演出があり、邦画で学園モノなのに妙に凝ってるなぁと関心しました。

 

印象に残ったところは親父がギターを叩き割るシーンですかね。息子を失い、仕事の関係上死ぬほど叩きたい米軍(息子を殺したのは米軍関係)を叩けずにやり場のないフラストレーションを抱えていた親父の鬱憤が爆発したシーンです。こんな時にお前はバンドなんてくだらねーことしやがって!みたいな感じで兄の遺品で妹に受け継がれたギターを地面に叩きつけてぶっ壊します。

でもその後修理を申し出たりしてギターと娘との仲ともに修復しようと試みたりはします。

フラストレーションを溜めているのはリサの母親もまたそうで家庭環境は崩壊しています。

主人公たちは若い学生ですけど、親の心境とかも割と描かれているため親世代の方々にも感情移入の余地、方向性は残されています。

 

終わりは爽快感ありですが、親子関係含め全てが丸くおさまった解決大団円めでたしめでたしというような安易な演出はなされていません。わかりやすくすべてを描かず、描かれていない面や想像に委ねさせるようなぼかしたような感じの部分もありちょっとした余韻も残ります。

家族を失ったという事実はそんなに簡単に割り切れるものではなく劇中では一段落したものの徐々に時間をかけて受け入れていくんだろうなと。仲間も同様に。物語は終わるけど彼らの人生は続いていく。

私がこんなことを思ったのは登場人物が物語を動かす単なるコマじゃなくキャラやパーソナリティーに血肉が通っていたからこそだと思います。

 

音楽ではモンゴル800の楽曲がふんだんに使用されていますのでファンの方は嬉しいでしょう。

 

キャストでは世良公則が老化で痩せたためか顔が細くなっていて世良公則っぽい顔をした別の俳優さんかと思いきや世良公則ご本人でびっくりしました。髪型も全盛期と違いますし。

 

期待してませんでしたが、思ったふうなものとはいい意味で違っていて思わぬ掘り出しもの見つけたという印象です。