2008年。
ベンノ・フユルマン主演のドイツ映画。
殺人の壁の異名を持つアイガー北壁初登攀を目指す二人の若き登山家を描く作品です。
大自然の容赦なさ、恐怖、絶望を色濃く描き出した作品でそれはもう見ていて涙が出そうになるくらいでした。
当初はラストで無事登攀出来てバンザイくらいを予想していました。
主人公のトニーも相棒のアンディも凄腕のクライマーだからです。
ですが序盤過ぎくらいでオーストラリア隊と合流して4人に行動するようになってから急激に問題が頻発するようになります。
いきなり落石でオーストラリア隊の片割れヴィリーが大ダメージを負い足手まといになります。それから何度かのビバークを挟みつつ頂上を目指しますが、ヴィリーがいよいよ限界となり下山することに。
ここのシーンは印象的でした。アンディは直接は言いませんが、お荷物を見捨てても上を目指すスタンスです。対してトニーは人命最優先。このまま上を目指してもヴィリーは頂上から下山するまで確実に持たないという理由から下山しようと言います。
トニーの熱弁でアンディは折れます。そして動けなくなったヴィリーは文字通りのお荷物となり隊の負担となります。
天候は更に悪化し、雪崩によりオーストリア隊のエディが壁に頭を打ち付け絶命。
トニーがアンディ、ヴィリーを一人で支えるという形になります。このままでは3人共倒れとなることを予見したアンディが自らザイルを切り、ヴィリーともども谷底へ落ち死亡。
トニーは絶叫します。
もうこの時点で悲しすぎます。序盤あんなに仲良よかった親友だったのにこんなにあっさり・・・
ヴィリーを見捨てなかったというのが最大の判断ミスでそこから負の連鎖がすごいことになりついに相棒の命までも奪われてしまいました。
さらにすごいのがこの、アンディがザイルを切ったという事実がさり気なく後の伏線となっていることです。
トニーは装備をほぼ全て失い、救助を待つことしかできなくなります。
皮膚は赤黒くただれ手もガチガチでまともに動かすことができません。
今夜この吹雪を耐え忍べば明日は止むので助かるかもしれない、でもこのままでは死んでしまう。とうことで恋人のルイーゼが寒い中近くまで来て励ましてなんとか命をつなぎとめます。
翌日、昨日は悪天候過ぎて無理だった救助が行われます。
しかし、アンディがロープを切ってしまったせいで、長さが足りないということに。
でもなんとかなる。恋人のラブパワーもあるし、救助されるだろう・・・親友の犠牲もあった、でもこれから乗り越えていくんだろう、助かって、生きて。本当にそんなことを思ってみてました。この時までは。
でもそれからまさかの展開が。
恋人、救助隊を目の前にしながらトニーは限界を迎え絶命します。宙吊りのまま。
あと一歩届かず。
アンディが死んだときも、嘘だろ、と思いましたが、このときはもう最大に嘘だろ・・・まじかよ・・・でした。
というのも、北壁の猛吹雪に耐えている彼らを見て、私は心のなかで劇中の人物と同じように頑張れ!と唱えてました。それくらい入れ込んでいたわけです。
ところがどっこい、終わってみれば全滅。
実話とは言え落胆するったらありゃしない。
ラストは残された恋人のその後が描写されて物語は幕を閉じます。
とにかく山は怖い!大自然なめたらあかん、そんな殺生な!という現実的な恐怖感を強く私の心に刻みつけた作品。
すごい鬱です。