2002年。
アメリカ銃社会を皮肉ったマイケル・ムーア監督出演のドキュメンタリーテイストの映画。
斬新な切り口や意外な着眼点を目指して感想を書こうと思いましたがそれは背伸びで背伸びしたところでボロがでます。なので等身大の浅はかな感想にします(予防線)。
考えさせられる系、というかアメリカ銃社会に一石を投じる内容です。様々な切り口からアメリカ銃社会を批判しています。例えば同じ銃が国民にとってポピュラーな存在である隣国カナダとの比較です。同じ銃社会なのに銃殺事件の件数はアメリカのほうが圧倒的に多いのはなぜか?というような感じです。
銃社会批判のみならず人々の恐怖を利益に変えるロッキード社批判とかもしています。
「福祉よりも就労」の話もきついです。生活保護が受けることができなくなった母子家庭の母親の話、まさに搾取、弱いものいじめです。この話がどこにつながるかというと6歳が6歳を銃殺した事件に繋がります。この話については終盤に詳しく紹介されます。
この映画はもう20年近く前の映画です。
この映画のメインは1999年のコロンバイン高校銃乱射事件ですが、公開後も2007年のバージニア工科大学銃乱射事件、2016年のオーランドのナイトクラブ銃乱射事件など日本人の私でも記憶に残っている銃乱射事件は起きています。
バージニアの事件はコロンバインのと同じく学校が事件現場になっています。コロンバインのときアメリカのマスコミは大々的に連日事件を報道しました。でもバージニアのときは全然報道しなかったそうです。
その原因にこの映画の存在があったからと推測している人もネットにいました。
この映画はアメリカの銃社会を批判する映画です。一方マスコミ側は銃社会バンザイというスタンスだと思います。なぜならマスコミは銃が売れたほうが美味しい思いをできるからです。
また今年も話題になり今に始まったことじゃない白人警官による黒人射殺事件に関しても人種差別の一言で自分の中で片付けていましたが、潜在的に白人が黒人に対して持つ恐怖心というのもあるのかなと思いました。
劇中には銃をこよなく愛する人、事件の被害者(体に銃弾が入っている生徒、下半身不随になり一生歩けなくなった生徒)、被害者の遺族、Kマート社員、マリリンマンソン、アフリカナイズドビー、カナダ人、研究者いろいろな人が出てきます。
個人的に好きなのは鍵をかけないアイラブニューヨークTシャツを来たハゲたちょび髭のカナダ人のおっさんです。出演時間は1分にも満たないんですけどなんか好きになっちゃいました。
真面目パートの黒人女性にインタビュー中に女性が感極まってしまい顔をそむけてしまうんですがその女性をすまない・・・と慰める監督も良かった。
演出面では、劇中では白人の傍若無人っぷりを皮肉る歴史アニメが流れたり、カナダおもしろ雑学コーナーが流れたりコメディーパートを挟むことにより緩急、メリハリをつけています。
1年間に銃で死ぬ人の数のパートも好きです。他の国は2桁3桁なんですけど最後にアメリカ10000人!とか思わずえ~!とびっくりしてしまいました。
クライマックスも良いですね。Kマートにリア凸して交渉の末に銃弾の販売を段階的にやめさせることに成功します。体にKマートの銃弾が入っている事件被害者を連れて行って「銃弾を返品しにきた」というブラックジョークも良かった。
そこからこの映画における敵役、ラスボスポジの銃社会の権化とも言うべき人物へムーアが突撃します。その人はあのような事件が起きた直後の街で銃社会バンザイ!という大規模な集会を開いたことがあるんですけど、その点について追求したり、手を変え品を変え言い訳を変えるその人物をソクラテスのように詰めていくシーンも良いです。
ちなみにムーア自身物心ついた時から銃を扱っていてライフル協会の会員でもあります。
インタビュー中の発言に関してはマリリン・マンソンの発言がとても的確に感じました。詳しくはWIKIPEDIAにあります。アメリカって人の恐怖をお金に変える国なんですね。戦争をするとお金が儲かるというのもわかった気がしました。
初見ですがいろいろ考えてしまい結局3周しました。