2011年。
ウディ・アレン監督。
主人公が過去に戻ってピカソやダリとかヘミングウェイと話をしたりまた現実世界に戻ったりする中でいろいろ気づいていく物語です。
まず雰囲気がいいですねぇ。雨の日の夜にゆったりした気分でみたい映画です。
終盤のアドリアナとの会話の中に出てくる「みんな過去に戻りたがっている」というのが面白いです。その過去は黄金時代とこの映画の中では言っています。1920年代フランスに生きる人はベル・エポック（そこから20年くらい前）に黄金時代を感じ、ベルエポックに生きる人はルネサンス基を黄金時代に感じる。人はみなどんどん過去に戻りたがるのではないか？というものです。いわゆる懐古厨です。
自分もかつてはそういう「昔がよかった」というように思うことがありこの物語の主人公もそう思っていました。そしてある日その願いは叶い、かつての偉人や巨匠に出会い興奮します。ピカソの愛人に一目惚れしたりします。
劇的な伏線回収とか大どんでん返し、超展開はありませんので「動」を求める人は退屈に感じるかもしれません。「静」な映画で芸術や文学に興味がある人はより楽しめると思います。私は芸術にも文学にも興味はありませんでしたが、劇中の中に登場する人物が発するセリフの節々に興味を持つことが出来、面白いとも思えたため間延び感や退屈感は感じませんでした。
ラストにヘミングウェイが主人公の書いた小説から婚約者の浮気を見破るというのも面白いです。その妻ですが正直この映画を見ているときに邪魔でした。小うるさいし、物に執着するタイプ、明らかに主人公とは価値観が違っていてなんでこんな女と婚約したんだろう？と思っちゃいました。そんな中時折見せる可愛さにギャップを感じて魅力的に見えるとかそういうんでしょうかね。
そしてラストシーン。過去で一目惚れしたアドリアナとも別れ、婚約者とも婚約を解消してどうするんだろうと思ったらそこにレア・セドゥ登場。パリの深夜です。最後は価値観が似通っている2人が降り出した雨のパリの街に消えていくという希望を感じさせるしっとりしながらも爽やかなものだったのでとてもきれい。
全体的に展開という点から見ると地味なんですが、こういう映画も悪くないです。むしろ映画ならではですね。こういう余韻の出し方ができるのは。
