【映画感想】ファースト・マン(2018)
2018年。
月面着陸で有名なアームストロング船長の自伝をテーマにした映画です。
動と静で言えば思いっきり静
自伝なので淡々としてる
地味
こんな映画です。
なので動を求める人からすると退屈かもしれません。
私自身この映画はとても良かったです。
冒頭で2歳の病気の娘さんが治療の甲斐なくお亡くなりになってしまいます。
このことがアームストロングさんの心に強く刻まれ、今後の彼の原動力になり決して晴れることのない闇となります。
劇中、宇宙で回転に耐えるための訓練とか、何回か宇宙に行って、最後のクライマックスで月面着陸という流れになりますが、私はどちらかというと彼と彼の家族絡みのパートが印象に残りました。
同業者(宇宙飛行士)の訓練中の事故や機械トラブルで死んでいくという常に死と隣合わせの職業に従事する夫を持つ妻はもう気が気じゃないでしょう。
中盤に宇宙空間で船がめちゃめちゃ回転して気を失う(=死)の寸前になりその音声をちょくで聞いていた奥さんがブチギレて管制塔に乗り込んで喚き散らすというシーンがありますがお気持ちは想像できました。
アポロ計画で宇宙に行く前日、家族に何も告げずに行こうとする夫に妻が子供にちゃんと説明してから行けというシーンもなんだかもうやるせないです。
そしてクライマックスで月面に無事着陸するわけですが、そこの無音の表現が宇宙の怖さとか闇を表現していてブルッと来ました。
その一方で同僚が月面をぴょんぴょん楽しそうに飛び跳ねています。
このシーンは娘のブレスレットをクレーターに投げ入れるまでに10分くらいあったように思います。その間に向こう側に見える地球を観たり、月の表面はめっちゃ細々としていることを報告したり、足跡つけたり、歩きだしたり、二重のフェイスシールドの外側をオープンして泣きそうな顔をしたりします。
そして、彼が家族と過ごした楽しかった日々の回想が挿入されます。
そこにはなくなった娘さんの姿もあります。
このパートはすごくスローリーながらも思わず手を止めてしまうような不思議な感じがします。
帰還後のラストシーン。
検疫のために隔離された夫とガラス越しに対面する妻。
見つめ合う二人。二人の間に言葉はなく静かに幕を閉じます。
鑑賞中の大部分は動きのあまりない展開に半ば退屈を感じていたというのが正直なところです、ただ観終わった後になんとも言えない余韻が襲ってきました。登場人物が感じていたであろう気持ちは劇中ではおおっぴらにされず、鑑賞する側の想像に委ねられているんですけど、私は一言では言えない複雑な感情のようなものを共有しました。
そこでなんかいい映画だなと思っちゃいました。
なのでいい映画なんだと思います。私にとっては。